私は新ローズの戦闘システムが好きです。
…と言ったら、石を投げられました。
頭を抱えてなぜかと問うたら、投げる人曰く、「いや、バランス悪いだろ」「反応高ければ強いって、ねぇ?」「丘小人強すぎ」「結局種族で決まるんだろ!?」
複数人いらっしゃったようです。そして皆、正しい。
そうして私は泣きながら家に帰り、必死に反論を探すのでした。
翌日GMとなった私は、猛烈と反論します。
「バランスが悪いのは認めるよ(丘小人が強いのも)。でも、それでも私は好きなんだ。
受けた傷がどんなものか、イメージできるところが好きなんだ。
負傷が直接的に動きを鈍らせるということを、如実に描いているのが好きなんだ。
考えてもみてくれよ、小鬼の剣が麗しい妖精の頬を切り裂き、その美貌を損なわせるなんて美しいじゃないか。格好いいじゃないか。こんな事柄が露骨に表れるの、ローズだけだぞ!!」*1
友人たちは互いに顔を見合わせ、肩をすくめます。
「なんだよう。
……そりゃ確かに君のPCは反応が低くて戦闘じゃ活躍できそうに無いさ。前線に出れば、闇鬼の戦斧に頭をかち割られるのが関の山だろうさ!! でも、剣を振るうだけが戦いじゃないだろう!? PCがいつも戦士だなんて誰が決めたんだよう!! 力なきものが旅に出ることが、何かを救おうとすることがそんなに格好悪いかよう……。
いいじゃないか、弱くたって!! 格好悪くたって!! それがそのキャラクターなんだろう? 戦いが苦手で、とろくて醜くて、そして気の弱いそいつがさ。それでいいじゃないか。それが君のキャラクターなんだろう? それでいいじゃないか!?」
卓を囲んでいた友人たちは互いに顔を見合わせました。一人が「あ、やべ。俺今日用事あるんだった」と言って立ち上がります。「俺も」「俺もだ、やべー」「ごめんな……」
4人とも立ち上がり、「悪かったな」と言って出て行ってしまいました。
私が一人、残されてしまいました。
彼らが置いていったキャラクターシートを、1枚1枚拾い集めます。そこには、ユルセルームという大地に立ち、王の道という街道を行く、数人の旅人の姿がありました。
あるものは風妖。数百に近い時を経たその容貌は独特の風格をかもち出しています。……生来の気の弱ささえなければ、それこそ彼らの社会でそれなりの地位にもつけたでしょうに。
あるものは人間。農家の出の彼は、四季と共に移ろう自然と闘いつつけていた貫禄でしょうか、どっしりと構えた態度で仲間を支えます。
そして、あるものは丘小人。力が弱く、気も弱い。種族の特徴でもあるすばしっこい動きさえ、その丸い体が邪魔をして、いつも仲間に置いて行かれてしまいそうになります。それでもこうして長いこと旅を続けてきたということは、運だけはよいのでしょう。
……どのキャラクターも、お世辞にも強いとは言えませんでした。それは彼らにとって、大きな不満だったのでしょう。けれども、どのキャラクターも魅力に溢れていました。少なくとも、私にとっては。
そうして泣きながら後片付けをしている最中、私はキャラクターシートが1枚足りないことに気付くのです*2。