申し訳ありません。今回はポール・アンダースンの話じゃありません(注1)。
ファファード&グレイマウザーの話でもないです(注2)。
そういうわけで、話は変わります。
僕には、大好きなRPGのルールブックが二つあります。
そのうちの一つが、ファー・ローズ・トゥ・ロード サプリメントNo.2「剣と魔法」です。
ここでは「剣と魔法」について、それとユルセルームの“折れた魔剣”について。
私とローズ・トゥ・ロードと“折れた魔剣”のお話。
「剣と魔法」について話す前に、Fローズについて少しお話します。
このゲームには、色々と面白いルールが満載なのですが、
その中の一つに「感情ルール」というものがあります。
これは、各キャラクターの感情の状態をあらわすルールで、
喜び/悲しみ/怒り/憎しみ/哀れみ/慈しみ/やるせなさ/愛しさ/恐れ/無名の感情
の10種類の感情をパラメータで表現するというものでした。
「新しい出会いに“喜び”を感じる」、「戦いの最中相手に“憎しみ”を覚える」…
そんなシチュエーションを表現出来る素敵なルールでした(注3)。
ユルセルームのキャラクターは、皆、感情を持っているのです。
この感情ルールには、「感情共有」なんて選択ルールもあって、
「愛する人と“喜び”と“悲しみ”を共有する」なんてことが、それこそ実際に出来たりします。
感情を共有した相手の心の動きが、離れていても伝わってくるわけです。
ここからが「剣と魔法」のお話です。
「剣と魔法」は、Fローズの追加ルールを紹介したサプリメントです。
その中の一つに「アーティクル・ルール」があります。
これは“アーティクル”、つまり“剣や指輪など工芸品”のキャラクターを作って、
セッションに参加できるというファンタジックなルールです。
当然、“アーティクル”にも感情のステータスがあるのですが、
最初は“アーティクル”は感情を持っていません。
道具として使用される中で、“アーティクル”は一つずつ感情に目覚めていきます。
そして、“アーティクル”の感情は、その持ち主と共有することも出来ます。
ある剣は生き物を斬ることで“喜び”を感じます。
もし、その剣が持ち主と“喜び”を共有したなら、
この剣は、そのうち持ち主を戦いに誘うかもしれません。
また、別の剣は人を切ることで“哀しみ”を覚えます。
人が斬れなくなった剣は、一体、どうなるのでしょうか?
その剣の持ち主は、戦場に立つことが出来るのでしょうか?
そして、感情を一つ知る度に
“アーティクル”の精霊体―アーティクルの霊としての姿―(注4)は、
少しずつ人間へと近づいていきます。
最後に、10種全ての感情を知った時、アーティクルは人間になります。
アーティクルは人間になります。
Fローズのルールブックには“折れた魔剣”サイヤというキャラクターが載っています。 どんな娘かというと
「一見近寄りがたい、妖しげで冷たい雰囲気を放っているが、
ひとたび親しい仲になると、あけすけなく喋り、けらけらと笑うという、
親しみやすい雰囲気になる。やや躁鬱症的な面もあるらしい。
彼女は、冒険者の一団に同行し、それを助けるのがけっこう好きで、
特に未熟なパーティーに入りたがる。
もっとも、どうやら、未熟な冒険者たちが努力する様を観て、
昔の事を思い出すのが好きらしく、
極力、直接的な援助はしようとしないのだが。(Fローズ データブックより)」
だそうです。まあ、そんなキャラクターみたいです。
サイヤの初出は、1985年に発刊された雑誌、
シミュレイター新1号に掲載されたローズ・トゥ・ロードリプレイ「七つの祭壇」(注5)とあります。
アウトバーンという高校生サークルが作った日本では一番古い部類に属するRPGリプレイの一つです。
作中には“もの言う魔剣”サイヤという剣が出て来て、人間になります(注6)。
「七つの祭壇」からFローズの時代まで、作中では300年の時が流れます。
“もの言う魔剣”が“折れた魔剣”になる物語を、寡聞にして僕は知りません。
だから、“折れた魔剣”サイヤについて、僕が知っているのはこれで全部です。
ただ。
「七つの祭壇」からFローズの時代まで、現実では10年の時が流れます。
高校生だったアウトバーンのメンバーの一人“RED-Me”さんは、
今度は“藤浪智之”と名を変え、Fローズのルールデザインに名を連ね、
そして「剣と魔法」のルールブックを僕らに届けてくれました。
僕は、その本に“折れた魔剣”サイヤの物語の一端を感じることが出来ます。
そういうわけで、「剣と魔法」のルールブックが大好きな僕は、
そのルールブックを象徴するキャラクター“折れた魔剣”サイヤが大好きです(注7)。