部屋にはいると、既にスタッフは大方集まっている状態だった。開会式の打ち合わせ。ST挨拶の台詞を考えていなかったことをにわかに思い出す。パンフレット製作に追われていたしなあ。
考えた末、W:tAの世界に関するだいたいの説明はもう一人のワーウルフSTに任せることにした。自分の場合思い入れのあるゲームだけに、余計な事をしゃべってしまう可能性があったから。ゲームをやりなれてくると、つい初心を忘れてしまうのは怖いことだ。
打ち合わせがおわると、少しずつ緊張しはじめた。前日の会議でのやりとりを思い出したからだ。
「バリバリの WoD コアユーザが来たらどうするんですか?」
「いやあ、WoD が好きな人は、きっとやさしい人ばかりさ。不慣れでもフォローしてくれるさ、ガハハ」
正直、「 WoD オンリーだ、さあかかってこい」などと言いつつも、スタッフは一様に日本語からはじめた者たちである。未訳時代から連綿とプレイしてきたベテランが、おもむろに未訳サプリを開く姿を想像したら、それは恐れをなしたとしても仕方あるまい。
会場後方に展示してあるサプリメント類は、そんな我々をすくなからず勇気付けてくれる。 ヴァンパイアとワーウルフあわせて結構な数が並んだが、メイジのものがないのは、いかにもという感じで微笑ましい。そのうち、実際に読まれているものは 1/3 にも満たないだろう。内容について詳細に聞かれたら、わらってごまかすしかないなとみんなで確認しあった。
「まあ、本来は話題提起のつもりですから、あまりそこらへんは気にせず行きましょう」とは主催者忌村尚毅総帥の弁。
なお、某ワーウルフ ST の強い要望により、W:tA の参考資料としてコヨーテのぬいぐるみも陳列された。だからといって何か反応があったわけでもないが。
朝飯を食ってなかったためにコンビニへ行く。今回の功労者「札幌一」氏が、人の入り具合を盛んに気にしている。「何人来るかなぁ…」パンフレットを作ったときにトトカルチョをしたことを思い出した。私の予想は 8 人。総帥の予想は 13 人。「多く賭けておくに越したことはないですよ。ガハハ」と豪快だった。
札幌一の不安を紛らわすように、s2 が声をかける。「大丈夫ですよ、WoD は世界をまたにかけるメジャーゲームですから。」
みんなで乾いた笑い。
開会式も近いので会場に戻ってくる。卓を埋めるたくさんのお客さんに一瞬面食らった。さまざまな打算の後に冷静になる。本当はキョロキョロしたかったが、あからさまに挙動不審なのもどうかと思い、きたるべきゲームに向けて虚空を見つめながらワーウルフ脳を作るイメージトレーニング。そのうち開会式が始まった。
開会式終わって卓わけ。前日、自分が不人気説を声高に主張したメイジがあっさり埋まる。喜ばしいことだ。しかしメイジってそんなにおもしろそうかね?
むしろ W:tA が不人気。努力不足かな? ワーウルフは他の二作よりもとっつきやすいし、かっこいいし、人気あるんじゃないかと高をくくっていたことを反省する。
ゲームがぼちぼちと始まる。どの卓もおおむね希望人数と合致していて、よかったんじゃないだろうか。
私のワーウルフ卓も開始。自分に言い聞かせるように説明をすることでテンションをあげるタイプなので、説明重要。が、となりの卓から同じくワーウルフのゲーム説明が聞こえてきて非常にやりにくい。自分の要領の悪さがすぐわかってしまう。
あと、V:tM の説明もよく聞こえた。
もっと大きな声でしゃべらないといかんなあ。
□ ■ □
ゲームの結果を簡単にまとめてみました。
結果 … 3勝1敗1分
学ぶべきこと … ゲームとはテクニックである
ぐったりしてるところに ST 挨拶があるといわれて焦る。心の整理が……。
閉会式ののち、おまけイベントのために残ったのは 3人。ちょっとさびしいかな。
第2卓の準備が始まった。
今回のイベントは、WoD コンで作ったキャラクターを用いて他のゲームをしよう!
というのがコンセプトである。
用意したゲームは「ときめき天羅学園」「放課後怪奇クラブ」「ビーストバインド」「マギウス」の 4 つ。
どれも、WoD キャラが活躍(あるいは困惑)できそうなゲームばかりである。
実はもう一卓、「モンスター! モンスター!」がたつ予定だったが、諸所の事情でお蔵入り。
結局、希望を取ったところ「ときめき WoD 学園」と「ビーストバインド」がたつことに。
人数調整のために、私もビーストバインドに参加。実はちょっとプレイしてみたいと思っていたのでラッキー。ST だったのでキャラクターを作ってないことに気づいたが、手持ちのキャラを流用して参加する。
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ときめき天羅学園は、もともとは天羅万象を特徴付ける因縁・気合・業・宿業のルールをもちいて、恋愛モノ作品の心の動きを表現してみようというゲームでした。
WoD のキャラで学園恋愛モノがやりたい! と思った人は多いと思いますが(マジで?)、そんな皆様の欲望をかなえるべく、我々はときめき WoD 学園の提供を決めたのです。
実際のシナリオでは、入滅教団かレッドタロンかノスフェラトゥのどのヒロインを攻略するかによってマルチエンディングになっていたようです。
結局、入滅教団の入江滅子さんをめぐる恋のかけひきが繰り広げられたとか。
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ビーストバインドというゲームは、魔物の力を身にひめながらなお、人間として生きようとする「半魔」たちをプレイし、人間の絆と魔物のエゴのはざまで揺れ動くゲームだ。
これを WoD でプレイする面白さは、「キャラが必要以上に人間と馴れ馴れしくすることを余儀なくされる」というところにある。
いつもはあふれる業怒や内なる獣によって人間との付き合いが薄れがちなあなたも、ペラペラの愛チットをもらえば思わず笑顔も漏れましょう。
実際のシナリオでは、突然高校に放り込まれて姿を隠しながら高校生として生活することに。
少しづつこのまま高校生活もいいなーという思いが芽生えてきたところで、PC たちはある残酷な選択を迫られるのでした。
スピーディーかつスリリングかつ愛にあふれており、参加者として純粋に楽しめました。
最後まで残ってくださった方々に重ね重ね感謝。
多くのお客さんを迎えることができたのが、まず何よりも嬉しかったです。
アンケートを見た感じ、「 WoD の○○がプレイできるときいたので、張り切ってきました!」なんて人はやっぱり少なくてやや寂しかったですね。
今回、Silly Works の基本方針として、「 WoD をやりにきたぜ! さああんたらの WoD をみせてもらおうか!」という人を待ち望むというスタンスがあったので、それに関しては不完全燃焼な感も否めないというのがスタッフに共通した感想でした。
もちろん、「とりあえず RPG がやれるからくる」と言うのはコンベンション参加の大きな動機のひとつではあるわけで、こんなに人が集まるならまだまだ RPG も捨てたもんじゃないなあと思うわけですけどね。
スタッフがイベント運営になれていないのではというご意見もいただけました。
さしあたり、次回のイベント運営に当たっては、「内輪的にならない雰囲気作り」という目標をより徹底することを確認しました。
Silly Works が再びコンベンションを企画するかどうかは未定ですが、
「すべての○○を愛する人へ!」というコンセプトだけは変わらないことでしょう。
そして、きっとまた愚かな企画があがってくるはずです。
ご期待ください。